日々の業務の中で、社員に「あの件、どうなった?」と確認する回数がどれくらいあるでしょうか。
チームの仕事が進まず、誰の番かわからなくなる。結局、経営者である自分が毎回進捗を確認し、督促のチャットを送らないと仕事が止まってしまう。こうした「自分がボトルネックになっている」という課題を感じている方は多いと思います。
この記事の結論は、「今誰の番か(誰がボールを持っているか)」が曖昧な状態をなくし、ボール保持者を常に1人に特定するルールと仕組みを作ることで、経営者が督促しなくても自動で業務が進むようになる、ということです。
私自身、大量のLINE対応に追われ、自分が督促係になっている現状を変えようと試行錯誤しています。その中で気づいた、ボール保持者を明確にして仕組み化するためのアプローチをお伝えします。
経営者が「督促係」になってしまう本当の理由
経営者が督促係になってしまうのは、社員の能力が低いからではありません。「今誰の番か(誰がボールを持っているか)」が明確に定義されていないため、全体の流れを知る経営者が毎回確認・督促せざるを得ない構造になっているからです。
「あれどうなった?」が日常化する構造
仕事が止まる一番の要因は、「タスクが誰の手元にあるのか」がフワッとしていることです。 たとえば、お客様への見積もり提出という業務があったとします。
- 営業担当は「経理からの数字待ち」だと思っている
- 経理担当は「営業からの詳細条件待ち」だと思っている
お互いが「相手のボールだ」と思っていると、当然仕事は止まります。その結果、両方の動きを見ている経営者が「あの見積もり、どうなった?」と声をかけるまで、誰も動かないという構造ができあがってしまいます。
LINEグループが増えるほど進捗が迷子になる
コミュニケーションツールとしてLINEやチャットを多用していると、この問題はさらに深刻になります。
プロジェクトごと、クライアントごとにグループチャットが増えていくと、「誰かが返信するだろう」「誰かが進めるだろう」という心理が働きやすくなります。チャットのタイムラインはどんどん流れていき、結果的に誰がボールを持っているのかが迷子になります。
経営者がボトルネックにならない情報集約の仕組み化でも触れましたが、通知を追うだけで時間が消え、自分が督促のメッセージを投げないと物事が進まない状態は、仕組みが欠如しているサインです。
複数人にボールを持たせると仕事は止まる
「担当者:AさんとBさん」のように、複数人にボールを持たせると、仕事はかえって進まなくなります。責任を分散させると、お互いに「相手がやるだろう」と考え、結果的にどちらも動かずタスクが停滞するからです。
「みんなで確認」は「誰も確認しない」と同じ
「この資料、チームの皆さんで確認しておいてください」という依頼は、よくあるNGパターンの代表です。
| ボールの持たせ方 | 発生する心理 | 結果 |
|---|---|---|
| 複数人(Aさん・Bさん) | 「自分がやらなくても相手がやるだろう」 | 誰もやらない、または期日ギリギリになる |
| 全員 | 「誰かが気づいて発言するだろう」 | 何も決まらない、進捗が止まる |
| 1人(Aさん) | 「自分がやらないと終わらない」 | 責任を持って進める |
複数人を担当にすると、ミスがあったときも「自分だけの責任ではない」という意識が芽生えます。良かれと思って「チーム全員で共有」していることが、逆に当事者意識を奪ってしまうのです。
ボール保持者は常に1人に特定する
業務を進めるうえでの鉄則は、**「ボール保持者は常に1人」**にすることです。 サポート役や相談役が何人いようと、「今、このタスクを進める最終責任を持つ人」は1人でなければいけません。
「ボールが誰にあるか」が明確になれば、仕事を任せられないのは社員のせいじゃない。「判断基準」と「情報ルート」の仕組み化でも書いたように、経営者がいちいち間に入って指示を出す必要はなくなります。
仕事量ではなく「情報確認の構造」を変える
経営者が督促に追われているとき、問題の本質は「仕事量」ではありません。自分が情報のハブから抜け出し、システムやルールで自動的に次の担当者へボールが渡る「構造」を作ることが必要です。
自分がボトルネックになっている現状への危機感
会社の規模が小さいうちは、代表がすべての情報を把握し、それぞれの担当者に「次お願い」「これどうなってる?」とパスを回すことでなんとか回ります。
しかし、案件が増え、本部がボトルネックになる構造に陥ると、代表の処理能力が事業の成長の限界点になってしまいます。私自身、現在進行形でアポとLINE対応が多すぎるという課題に向き合っており、「自分がいちいち判断しなくても進む構造」を作らなければ、これ以上事業を広げられないという危機感を持っています。
重要な案件だけを管理画面で確認できる理想の形
目指すべきは、チャットで「あれどうなった?」と聞かなくても、管理画面や共有シートを見れば「今、誰のボールで、どこまで進んでいるか」が一目でわかる状態です。
社長営業の限界を突破する切り分け基準を作ったときと同様に、「自分が確認すべき重要なポイント」と「担当者間で自動でパスを回すべきポイント」を明確に分けることが重要だと考えています。
ボールが自動で回る進捗管理の仕組みを作るステップ
では、具体的にどうすれば経営者が督促係を卒業できるのか。業務フローを可視化し、各工程のボール保持者を明確にし、次の担当者へパスする「完了条件」を定義する3つのステップを紹介します。
ステップ1:業務のプロセスを分解する
まずは、よく滞る業務のプロセスを分解します。 たとえば「新規契約のオンボーディング」なら、以下のように分解できます。
- 契約書の締結
- 初回ヒアリングシートの送付・回収
- キックオフミーティングの日程調整
- アカウントの発行
このように、業務を「これ以上分けられない粒度」にまで分解することがスタートです。
ステップ2:各プロセスの「ただ1人の担当者」を決める
次に、分解したプロセスごとに「誰がボールを持つのか」を1人だけ決めます。
- 契約書の締結 → 営業担当のAさん
- 初回ヒアリングシートの送付・回収 → サポート担当のBさん
- キックオフミーティングの日程調整 → サポート担当のBさん
- アカウントの発行 → システム担当のCさん
ここで「営業チーム」のような曖昧な割り当ては禁止です。必ず個人名を入れます。
ステップ3:次の人へボールを渡す条件を決める
ここが一番重要です。「どうなったら次の人のボールになるのか(完了条件)」を明確にします。
- NG例:「ヒアリングシートを回収したらBさんに伝える」
- 改善例:「ヒアリングシートの回答が来たら、指定のフォルダに格納し、チャットで『確認完了しました。Cさん、アカウント発行をお願いします』とメンションを送る」
「何を、どこに置き、誰にどう伝えるか」という完了条件を明確にすることで、経営者が間に立たなくても、AさんからBさん、BさんからCさんへと自動でボールが回るようになります。
自分が情報のハブを抜け出すために試していること
偉そうに書いていますが、私自身も今まさにこの課題の真っ只中にいます。ここでは、自社で現在試していること、改善しようと取り組んでいることを共有します。
LINE対応に時間が消える現状の課題
現在、私の手元には大量のLINEグループがあり、日々凄まじい数の通知が飛んできます。「確認しておいてください」「どう進めますか?」といった相談がすべて自分に集まり、私が返信しないと現場が止まってしまう。つまり、私が完全に情報のハブであり、ボトルネックになってしまっています。
この「返信で時間が消える」状態を脱却するために、単純に気合で返信スピードを上げるのではなく、情報が集約される仕組みづくりを進めています。
進捗管理システムでボール保持者を可視化する試み
そこで現在取り組んでいるのが、進捗管理システムの開発です。 SaaSを入れても連絡が減らない?経営者の「情報ハブ化」を解消するシステム開発でも触れているように、既存のツールを入れるだけでは「入力されない」「結局チャットで聞く」という現場の課題は解決しません。
そのため、「今この案件は誰のボールなのか」「何日そのボールを保持しているのか」が可視化され、一定期間ボールが動かなければ自動でアラートが飛ぶような仕組みを自社で開発・テストしています。 これにより、私が一件一件チャットの履歴をさかのぼって「あの件どうなった?」と聞かなくても、重要な案件の滞留だけを管理画面で確認できる状態を作ろうとしています。
皆さんの会社では、「今誰待ちか」がパッと見てわかる状態になっているでしょうか?
今日からできること
進捗管理の仕組み化は、システムがなくても、日々のチャットのルールを少し変えるだけでスタートできます。今日からできることを3つ挙げます。
- 依頼時に「誰のボールか」を必ず言語化する 「みんなで確認して」をやめ、「このタスクのメイン担当(ボール保持者)は〇〇さんでお願いします」と指名する癖をつけます。
- 「誰待ちか」を可視化するルールを作る チャットのグループ名やスプレッドシートのステータスに、「A社見積もり_現在〇〇待ち」というように、次に動くべき人の名前を明記します。
- パスを回すときの「完了条件」をチームで決める 「終わりました」という報告だけでなく、「〇〇のフォルダに保存し、次の担当である〇〇さんにメンションしました」というように、次の人へ確実にボールが渡るアクションを標準化します。
経営者が督促係を続けている限り、事業の成長スピードは上がりません。まずは「今、このボールは誰が持っているのか?」を明確にするところから始めてみてください。




