「結局、自分がクロージングしないと決まらない」と悩んでいませんか。事業が伸びるにつれて社長のアポが増え、自分の処理能力がそのまま会社の限界になってしまう。この社長営業の限界という問題は、実は社員の営業スキル不足が原因ではありません。案件の難易度に応じた「クロージングの切り分け基準」と「情報集約の仕組み」がないことで起きる構造的な問題です。この記事では、自分が商談に出なくても事業が回る仕組みの作り方を、私が現在直面しているリアルな課題とともにお伝えします。
「結局、自分がクロージングしないと決まらない」という悩み
事業が伸びるほど社長のアポ数が増え、自分の処理能力が事業の限界になってしまう。これは現在、私自身がまさに直面している課題です。
アポ数が多すぎて時間が消えていく
事業が拡大し、紹介や問い合わせが増えるのはありがたいことですが、その分だけ商談のアポ数が増加しています。「ちょっと社長に会わせたい人がいて」「大事な案件だから山﨑さんから直接説明してほしい」といった依頼にすべて応えていると、1日のスケジュールがアポで埋め尽くされてしまいます。
アポが多いということは、それだけ事前準備や事後のフォローアップも必要になるということです。結果として、本来経営者が向き合うべき「仕組み化」や「次の一手」を考える時間がどんどん削られていきます。
自分が情報のハブになりボトルネック化している
アポに出続けると、現場の一次情報がすべて自分に集まってしまいます。すると、ちょっとした判断や確認事項でも「社長に聞かないと分からない」という状態になり、自分が情報のハブになってしまいます。
現場からの質問や確認の連絡がひっきりなしに飛び交い、私がそれに返信しないと物事が進まない。代表である自分が一番のボトルネックになっているという事実に、強い危機感を感じています。
なぜ「代表が出ないと決まらない」のか?
「代表が出ないと決まらない」という状況は、社員のスキル不足ではなく、すべての案件を同じフローで処理し、誰が対応すべきかの明確な基準がないことが原因です。
すべての商談を同じ難易度として扱っている
商談には「誰が対応しても決まる案件」もあれば、「代表が本気でクロージングしないと決まらない案件」もあります。しかし、多くの会社ではこの難易度を切り分けることなく、すべての商談を同じフローに乗せてしまっています。
「とりあえずアポが取れたから社長にパスする」というフローが定着していると、本来は自分が出なくていいアポにまで時間を取られることになります。クロージングの属人化を防ぐためには、このフローそのものを疑う必要があります。
判断基準がブラックボックス化している
代表が商談でどのように判断し、どんな言葉でクロージングしているのか。それが言語化されておらず、ブラックボックス化していることも大きな原因です。
「臨機応変に対応する」「相手の空気を読んで提案を変える」といった暗黙知に頼っているうちは、社員に任せることはできません。結果として仕事を任せられないのは社員のせいじゃない。「判断基準」と「情報ルート」の仕組み化の記事でも書いたように、基準がないから任せられない、任せられないから自分でやるという悪循環に陥ってしまいます。
よくある間違い:成約率が落ちて「やっぱり自分がやる」と戻す
営業の権限移譲を始めた初期に、成約率が一時的に落ちるのは当然のことです。ここでプレイングマネージャーに戻ってしまうと、営業の仕組み化は永遠に進みません。
短期的な売上減少への恐怖
社員にクロージングを任せ始めたとき、「今月の売上が落ちるかもしれない」「この大事な案件を落としたらどうしよう」という恐怖が必ず顔を出します。そして、「今回だけは自分がやろう」と商談に出てしまう。
気持ちは痛いほど分かりますが、これを繰り返していると、いつまでたっても社長営業から抜け出せません。加盟店が増えるほど代表が忙しい?本部がボトルネックになる構造と仕組み化でも触れたように、目先の売上を追いかけて体制づくりを後回しにすると、結局は中長期的な事業成長の足枷になります。
「気合い」や「スキルアップ」への過度な期待
社員に任せて決まらなかったとき、「もっとロープレをしよう」「気合いが足りない」と、個人のスキルアップやマインドに原因を求めてしまうのもよくある間違いです。
もちろんスキルアップは大切ですが、それ以上に「そもそもその案件は、今のその社員のスキルでクロージングできる難易度だったのか?」を考えるべきです。構造的な問題(=切り分けができていないこと)を、個人の能力の問題にすり替えてはいけません。
案件の難易度と属性による「切り分け基準」を作る
「自分が出なくていいアポ」を明確に定義し、案件のコンテキストや難易度に応じてクロージング担当を分ける構造が必要です。
誰でも決まる案件と代表が必要な案件の定義
まずは、商談を難易度別に切り分ける基準を作ります。以下は、切り分け基準の一例です。
| 商談の属性 | 難易度 | クロージング担当 | 対応方針 |
|---|---|---|---|
| 導入意欲が高く、予算も確保済み | 低 | 営業担当(社員) | 標準化された提案資料で対応 |
| ニーズは顕在化しているが、他社と比較中 | 中 | 営業責任者 | メリット・デメリットの整理とクロージング |
| 相手が経営層で、全社的な経営課題の解決を求めている | 高 | 代表 | 経営者目線での事業提案と深いディスカッション |
このように「どんな条件が揃っていれば社員に任せるか」を定義することで、代表が出なくてもいいアポを仕組みとして弾くことができます。
紹介営業における事前期待値による分類
とくに紹介営業の場合、「とりあえず会ってみて」で組まれたアポは難易度が跳ね上がります。一方で、事前にこちらの強みや相手のメリットが伝わっているアポは、誰が出ても決まりやすい傾向があります。
「とりあえず会ってみて」のアポをなくす紹介営業のコンテキスト設計や、商談の成約率は「事前の期待値調整」で決まる。無駄なアポを削るコンテキスト設計でお伝えしている通り、商談前の「期待値のコントロール」ができているかどうかで、誰がクロージングすべきかを切り分けるのも有効な手段です。
ここで少し考えてみてください。 「あなたの直近の商談のうち、事前の期待値調整ができていれば、社員でも決まったはずの案件はいくつありましたか?」
現在の取り組み:情報集約と進捗管理のシステム化
クロージングの属人化をなくすため、現在私自身も、大量のLINE対応を減らし、重要な案件だけ管理画面で確認できる進捗管理システムを開発しています。
LINEの都度確認から抜け出す構造変更
現在、私は大量のLINEグループでのやり取りに多くの時間を奪われています。案件の進捗、担当者からの相談、ちょっとした確認事項などがすべてLINEに流れてきて、返信で時間が消えていく状態です。
このLINE地獄から抜け出す方法。経営者がボトルネックにならない情報集約の仕組み化を模索する中で気づいたのは、情報が分散しているから「私が全部見なければいけない」という状況に陥っているということです。
仕事量ではなく「情報の流れ」を変える
そこで現在、進捗管理システムの開発に取り組んでいます。目指しているのは、各案件の進捗やフェーズがシステム上で一元管理され、私が個別に対応しなくても「今、どの案件が、どんな難易度で、誰のボールになっているか」が可視化される状態です。
重要な案件や、代表の判断が必要なフェーズに達したものだけが管理画面に上がってくる。それ以外は基準に沿って現場で進む。このように、自分の仕事量を気合いでこなすのではなく、「情報の流れ」そのものを変えようと試行錯誤しています。
今日からできること:直近10件の商談を棚卸しする
まずは直近の商談を振り返り、「自分が出なくても決まったはずの案件」の共通点を洗い出すことから始めてみてください。
出なくてよかったアポをリストアップする
過去のスケジュール帳を開き、直近10件の商談を振り返ってみましょう。その中で「これは自分がやらなくてもよかったな」と思えるアポを探します。
最初の切り分けルールを一つだけ決める
リストアップできたら、なぜそのアポは自分が出なくてもよかったのか、その共通点を言語化します。そして、今日から試せる行動を始めてみてください。
- 直近10件のアポを「社員でも決まった」「自分しか無理だった」に分ける
- 「社員でも決まった」案件の共通点(紹介元、予算感、事前情報の有無など)を書き出す
- その共通点をもとに、「こういう条件の案件は、次回から社員に任せる」というルールを1つだけ決める
- 決めたルールを営業チームに共有し、次のアポ振り分けから適用する
代表が現場に出続ける限り、事業の規模は代表の時間の限界を超えられません。「自分が全部対応しなくても事業が回る状態」を作るために、まずは小さな切り分けから試してみてください。

